◎ ちいさなちいさな夢 ◎


一つの扉がありました。

とても簡素な造りで、どんな所でも見かける様な、茶色い扉でした。
扉だけ、くっきりと見えるのに、周りは真っ暗です。
暗くて暗くて、寂しくなる場所でした。


そこの前に、少女は立っていました。
ここはどこかしら。そう思い、辺りを不安げに見回します。
すると、暗闇から1匹のスーツ姿の蛙が現れました。
ここは貴方の夢の中。蛙はそう答えます。
少女は声にだしていないのにどうしてわかったのと聞きます。
それは夢だからです、と蛙は答えました。
ここは、世界のはぐれ。そしてこの扉は小さな小さな夢に繋がっている。
夢へ行け、どんな事でもできると、蛙はネクタイを直しながら教えてくれました。
少女は言います。
じゃあ、あたしのおとうさんやおかあさんに会えるの?
蛙はもちろんと頷きました。

少女は、戸惑いも無く扉を開きました。
そこは、しろいしろい光に包まれていました。
その中に、少女のおとうさんとおかあさんがいます。
少女はおとうさんとおかあさんの元へと走りました。


初めて頭を撫でてもらいました。
初めて抱きしめてもらいました。
初めて愛しているよといってもらいました。
とてもとても幸せでした。
少女はおとうさんの膝の上で眠り、おかあさんの胸の中で泣きました。
寂しかったと。悲しかったと。
二人は泣きながらごめんねと、繰り返します。

少女はそれを見て、ココロが痛くなりました。
あたしはもう大丈夫だから泣かないでと少女は言いました。
二人は泣いていました。
少女は笑顔で続けます。
おかあさんおとうさんの事大好きだから怒ってないよ。
大好きだから元気をだして。
だから、あたしは大丈夫だよ。おとうさんとおかあさんも大丈夫だよ。


そして少女はおとうさんおかあさんに別れを告げ、元来た道を引き返しました。
少女の目は強い光を称えていました。
幼い顔の中、太陽のような暖かさを持っていました。
少女はあの扉をくぐり、また真っ暗な中に戻りました。
そして、扉に出会う前と同じように、少女はまた眠りにつきます。
もう寂しくも悲しくもありませんでした。
蛙も扉ももうどこにもありませんでした。
























ある夫婦が、流産した愛しい我が子の夢を見ました。
























                                        2005/06/19 執筆